はじめに
この記事の内容はポケットモンスター スカーレット・バイオレットのランクマッチ シリーズ1(シーズン1~シーズン2 2023年12月2日~1月31日)に準拠する。
概要
「ちいさくなるバトン」とは、ちいさくなるで回避率を大幅に上げ、バトンタッチでアタッカーに交代して全抜きを狙う戦術である。ちいさくなるは一部の技が必中かつダメージが倍加される欠点を持つが、バトンタッチにより回避率上昇のみを引き継ぐことができる。相手を手詰まりにさせる、いわゆる「害悪」戦法の一種であり、試合時間は長くなる傾向がある(カジャルバトルでは逆に、早々と降参されることも多い)。過去作から存在するが、前作ソード・シールドではダイマックス技が必中のため使いにくかった。今作スカーレット・バイオレットではダイマックスは無くなったが、相変わらず逆風である。回避率上昇を無効化する特性てんねん持ちの強力なポケモン(ヘイラッシャ、ラウドボーン)や、強力な必中技を持つポケモン(マスカーニャ、ドドゲザン)の使用率が高いことが主な原因。この戦術を使うには一工夫が必要で、それでも厳しい相手の場合のために裏の選出を用意しなければならない。
ちいさくなる
回避率を2段階上昇させる技。相手の攻撃が命中する確率は、1回使用すると3/5(60%)、2回で3/7(約43%)、上限の3回で3/9(約33%)になる。命中する確率の減少幅は1回目より2回目、2回目より3回目の方が小さくなる。命中率100%の技の場合、最大の6段階上昇させても3回に1回は命中するため過信は禁物。逆に言えば、1回目だけで命中する確率を40%も減少させられるので、長く居座って妨害されるリスクを負うより早めにバトンタッチした方が正解のこともある。シリーズ1で使用可能なポケモンのうち、覚えるのはフワライド、ベトベトン、サダイジャ、ハリーセンとその進化前のみ。比較的珍しい技と言える。
必中技には無効。ドゲザン、トリックフラワー、はどうだんの他、天気「雨」のかみなり、天気「雨」のぼうふう、天気「雪」のふぶき、ロックオンの次のターンも無効。クリアスモッグも必中技のため無効で、上昇した回避率を元に戻されてしまうが、みがわりで防ぐことはできる。
あまり知られていないが、一撃必殺技にも効果が無い。対人戦では一撃必殺技が命中する確率は常に30%で、命中率や回避率の影響を受けない。きょけんとつげきの次のターンなど、必中になる効果は適用されるので混同しないようにしたい。
変化技ではのろい、ほろびのうた、くろいきり、ふきとばし、ほえるには無効。どの技もちいさくなるバトンにとっては戦術が崩壊する致命的な効果で、みがわりで防ぐこともできない。あくびも無効だが、ねむけ状態になる前ならみがわりで防ぐことができる。一方でトリック、ちょうはつ、アンコールには有効。命中率が設定されている(100%を含む)技には有効で、命中率が設定されていない技には無効と理解しておけば覚えやすい。アンコールは外れる可能性があると弱くなる技であり、ちいさくなるをアンコールされたら遠慮なく最大まで積むことになるので比較的被害が少ない。一方、ちょうはつは積むこともバトンタッチもできなくなる致命的な技で、みがわり無効、かつ覚えるポケモンも多く採用率も高いので対策が難しい。ちょうはつを避け続けることに期待するのはハイリスク過ぎるので、早めのバトンタッチをした方がよい。ちいさるなる一回だけでも引き継いでしまえば、アタッカーがちょうはつを受けてもそれなりには戦える。トリックはみがわりでも対策可能。先手を取れていれば、トリックでこだわりスカーフを押し付けられても次のターンにバトンタッチを使用できるので被害は少ない。
のしかかり、ふみつけ、ドラゴンダイブ、フライングプレス、ヒートスタンプ、ヘビーボンバーには逆効果。1回以上ちいさくなるを使うと「ちいさくなる」状態となり、これらの技が必中になりダメージが倍加する。このデメリットはバトンタッチで引き継がれない。
バトンタッチ
能力変化などを引き継いで交代する技。交代先のポケモンは選択できる。先手で使用した場合、そのターンの相手の攻撃は交代先のポケモンが受ける。能力ランクの変化だけでなく、みがわりも引き継がれる。マイナスの効果も引き継がれる。ほろびのうた、のろいも引き継がれてしまうので、回避率どころの話ではなくなる。こんらん、やどりぎのタネも引き継がれる。ねむけ(あくび)、しおづけは引き継がれない。どく、まひ、やけどは引き継がれない。特性かるわざによる素早さ上昇効果など、能力ランクの変化ではない能力変化は引き継がれない。
ちいさくなるバトン型フワライド
ちいさくなるとバトンタッチを両立できるポケモンはフワライド(とフワンテ)のみなので、ちいさくなるバトンはフワライド専用戦術である。フワライドの特性はゆうばく、かるわざ、ねつぼうそうの3種あるが、かるわざの採用が一般的である。アイテムを失うことで素早さが2倍になり、大幅に先手を取りやすくなる。アイテムはかるわざの発動を考慮して選択することになる。フィールドを展開するメンバーが必要になるが、サイコフィールドで特防を1段階上げるサイコシード、グラスフィールドで防御を1段階上げるグラスシード、エレキフィールドで防御を1段階上げるエレキシードが使いやすく、能力上昇をバトンタッチでも引き継げるので有用である。フワライドはひこうタイプなので、各フィールドの恩恵を受けるにはひこうタイプ以外にテラスタルする必要がある。先制技(特に特性いたずらごころによる厄介な変化技)を無効にするサイコフィールド、HPを回復するグラスフィールド、みがわりで防げないあくびを無効化するエレキフィールドのいずれも有用。ちょうはつピンポイントの対策になるが、メンタルハーブも選択肢になる。ちょうはつを1回無効にしてくれるので、先手敵ちょうはつ→メンタルハーブ発動→かるわざ発動→後手フワライドちいさくなる→先手フワライドバトンタッチといった立ち回りが可能になる。アンコールにも一応有効。登場時にかるわざを発動できない欠点は大きいが、フィールド展開役が不要になる。マスカーニャやロトムなどで相手を掻き回してからフワライドを繰り出す動きも悪くはない。
技は当然、ちいさくなるとバトンタッチを確定として、みがわりもほぼ確定と言える。みがわりがあればトリック、さいみんじゅつ、でんじはといった厄介な変化技を防ぐことができ、相手の攻撃技のダメージを抑えることができる。一撃必殺技に対してもみがわりが有効に働き、みがわりが消えるだけの被害で済む。ゴースト・ひこうタイプの素のフワライドはハサミギロチンとじわれは無効だが、弱点をずらすためにテラスタルするとこれらが当たってしまうので、対策は必要である。
最後の1枠をどうするか。たくわえるは防御と特防を3段階まで上げることができ、必中技対策として有効に働く。ちからをすいとるは回復しながら相手の攻撃を下げ、より安全に積むことが可能になる。ただし、変化技しか覚えさせない場合、ちょうはつが致命的になる。「だすことのできる技がない」状態になり、わるあがきしかできずに反動で倒れてしまう。ちょうはつは回避率の影響を受けるが、みがわりは無効のため、安定して防ぐことはできない。ちょうはつを嫌って攻撃技を採用する場合、エアスラッシュとゴーストダイブが選択肢になる。どちらもタイプ一致でそれなりのダメージが期待できる。エアスラッシュは3割のひるみ効果がある。ゴーストダイブは時間稼ぎができる。攻撃性能を重視するならエアスラッシュ、確実な時間稼ぎを狙うならゴーストダイブを選択する。
起点→積み→アタッカー
積み役はちいさくなるとバトンタッチを両立できるポケモンを用意する。シリーズ1で使用可能なポケモンではフワライドのみが該当するので確定となる。起点役には場を整えるポケモンを用意する。○○フィールドを張ったり、リフレクターやひかりのかべを張ったりして、積み役が積みやすくなる場を整える。いやしのねがい、だいばくはつ、すてゼリフなどで退場できる必要がある。ランクマッチで何回か当たって強いと思った起点役はイエッサンだった。イエッサンがサイコメイカーでサイコフィールドを展開、こだわりスカーフ+トリックで相手先発の行動を制限、いやしのねがいで退場する。積み役フワライドはサイコシードで特防を上げ、かるわざを発動する。素早さで上回りつつ、ちいさくなるとたくわえるで回避率、防御、特防を上げ、バトンタッチする。アタッカーはラウドボーンが安定する。積み合いになっても相手の能力上昇を(素早さ以外)無視できるのは大きい。全く同じ理由で相手にラウドボーンを出されると厳しいので、ラウドボーン同士の戦いで有利になるような調整が必要だろう。
テラスタイプは弱点をずらす目的で選択する。フワライドは悪が良い。ドドゲザンの必中技ドゲザンを受けることが可能となり、特性いたずらごころによる変化技も無効になる。ラウドボーンがノーマルが基本だが、フェアリーも選択肢になる。
実際の対戦
ちいさくなるをバトンタッチする戦術を試しました。他の人に使われて、完敗したので真似してみました。能力上昇わざを使うのはフワライドのため、ドドゲザンは苦しい相手ではありますが、悪テラスによりなんとかなるようです。
フワライドはみがわりを使いながら、限界までちいさくなるとたくわえるを使います。のろいはみがわりで防げず、かつバトンタッチで引き継がれるため、のろいの使用頻度が高いミミッキュ相手だと厳しいです。てんねんドオーものろい採用率が高く、そもそも能力上昇を無効化されるので勝ち目がありません。アンコールもみがわりで防げませんが、ちいさくなるやたくわえるの残り回数(双方とも3回まで)を意識すればそれほど困りません。ちょうはつは何もできなくなりますが、いたずらごころオーロンゲのちょうはつは悪テラスで防げます。
他には、先発イエッサンに対してアイススピナーなどを使われると、フワライドのサイコシードが使用できずギミックが不発になります。カイリューがアイススピナーを使えることは知っておく必要があるでしょう。また、ドラゴンテラスタルのドラパルトにゴリ押しされると勝ち目がないです。無理な相手は無理だし、ドラパルトは戦術が豊富で全てに対応するのは不可能なので諦めが大切です。
イエッサンとフワライドが何もできずにやられても、能力上昇のないラウドボーンだけで3匹突破できることもありました。
運用&カスタマイズ
強力な戦術だが無理な相手に突っ張るべきではなく、必ず裏の選出に逃げなければならない。
ちいさくなるバトンは強制交代技(ドラゴンテール、ふきとばし、ほえる)を受けると戦術が崩壊する。特に、ふきとばしとほえるはみがわりを貫通するので非常に厳しい。使用率の高いカバルドンはふきとばしを覚えるので天敵である。バンバドロはほえるの採用率が比較的高く、3~4割に達するので注意する。現実的にはバトン戦術を使わない裏選出の方が無難であろう。
のろい、ほろびのうた、やどりぎのタネはバトンタッチで引き継がれてしまう。特にのろい(ゴーストタイプ)とほろびのうたは回避率に関係なく必中で、かつ効果が致命的なので、例えば相手にミミッキュ(のろいの採用率が高い)がいるならバトン戦術は避ける。逆に言えば、ミミッキュを採用することで相手にバトン戦術を忌避させることができる。ほろびのうたはゲンガーやプクリン、ムウマージが覚えるが、採用率の低い技なのでゲンガーならバトン戦術を突っ張ってもよいかもしれない(使われたらほぼ負けなので覚悟は必要)。プクリンやムウマージをわざわざ採用している相手からは裏選出に引いた方が良さそうだ。
ドラゴンタイプにテラスタルしたドラパルトにドラゴンテールを連発されると苦しい試合になる。こだわりスカーフを渡してしまうために、かるわざフワライドでも後攻になってしまう。ドラパルトはドラゴンテラスタルが最も採用率が高く4割近くに及ぶ。フワライドかラウドボーンのテラスタイプをフェアリーにする調整も考えられる。フワライドのテラスタイプを悪からフェアリーに変更すると、アイアンヘッドが2倍になるが、ドゲザンは半減なのでドドゲザンは対処可能。いたずらごころオーロンゲのちょうはつもサイコフィールドが持続する間は防げる。
バトンに失敗しても諦めるのは早い。ラウドボーンは運が良ければ素で全抜きできる性能を秘めている。カジュアルバトルで試運転中、ドラゴンテラスのトドロクツキにバトン戦術を破壊された後、トドロクツキ・ソウブレイズ・ウィンディをラウドボーンだけで突破したことがあった。
一撃必殺技は回避率に関係なく3割命中する。それ以外の技も回避率6段階上昇でも当たるときは当たる。どうしても試合が長引く傾向があり、相手の攻撃回数も多くなるので、不運な一撃をもらう可能性は理論的にもそれなりにある。この類の戦術は基本的に運勝負であり、運負けはつきものと割り切るしかない。
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